この本は,自分で求めて読んだのではなく,もらって,いわば受け身的に読んだのだが,強い印象を受けた.内容的には,著者の旧友,二年西組の一人一人が,原爆投下時に何をしていたか,そして,どのように死んで行ったかを克明に調べ,記録したものである.
表面的には,ただ,それだけ.表だって何かを訴えているようには見えない.だけども,心に強く響く.どうしてだろうか,と思いながら,そのままになっていたが,昨日,新聞で次のような一節を読んだ.
広島の原爆で犠牲になったのは14万人とされる.「一人ひとりちゃんと顔を持って,人格を持っていたの」と伝えたくて,渡辺さんは朗読劇を続けてきた.(『朝日新聞』2018.05.05付け)
33年間,原爆に関わる朗読劇を続けてきた方の活動を伝える新聞記事の一節だが,これを読んで,本書を思い出し,なぜ,強い感銘を受けたのかやっとわかったような気がした.
旧友一人一人の様子を具体的に記録した本書は,原爆で殺された人々が,「一人ひとりちゃんと顔を持って,人格を持っていた」ことを強く訴えているのだった.
【補足】
関千枝子『広島第二県女二年西組: 原爆で死んだ級友たち』(筑摩書房, 1985).
平安高校に勤めていた頃,この本が夏休みの(?)課題図書に指定され,教員にも配布されました(全教員に配布したのか,担任だけだったのか覚えていない).そういう縁で読んだ本です.なお,その後,文庫本が出たようですが,そちらは見ていません.30年以上前に読んだ本ですので,記憶違いがあるかもしれません.