できたらサールナート出土の初転法輪像をお願いしたいのですが。いずれ、その時が来たら、何等(なんら)かのことをしなければならないと思っておりますので。その際には、私の写真は小さく奥に飾って、前面に初転法輪像を掲げ、おいでになった方々には私にではなくブッダに礼拝して頂きたいと思っているのですョ。私は生涯ブッダに仕えた身ですから
(中村)
仏教学者の中村元氏は島根県出身ですが,地元の新聞,『山陰中央新報』では,2012年から「生誕100年 中村元 人と思想」という記事が連載されています.その第39回で,かって中村博士と仏像などの写真集をお出しになった写真家の丸山勇氏が中村博士の思い出を語られ,そのなかで上の言葉を紹介されていました.サールナートの仏像は美しいことで知られていますが,その中の一つを自分の葬儀用に引き伸ばしておいて欲しいと依頼されたのでした.
お葬式などで遺影を飾るとき,遺影が中央にこないように,などといいます.礼拝するのは阿弥陀様だからです.中村博士の言葉も同じことを言っているのですが,“私は生涯ブッダに仕えた身だから,葬式に来た人にも私ではなくブッダに礼拝して欲しい”というのはいい言葉ですね.
【補足】
中村: 丸山勇 「初転法輪像」に思う (中村元 人と思想 第39回), 『山陰中央新報』, 2013年01月05日付け. Web上ではこちら.サールナートの初転法輪像の写真も載っています.