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「無用の用」
旧ブログ 2011年1月31日 (月)

 「無用の用」という言葉がありますね.言葉の上では矛盾していますが,なんとなく意味は分かります.これを筋が通る言い方で説明しろと言われたら・・・これは比較的簡単かな.

 最初の「用」と2番目の「用」は,指し示しているものが違っている.つまり,「用A」と「用B」と言わなければならない.そうすると,「無用の用」とは,「用Aではない用B」となって形式的矛盾はこれで避けることができた.では,「用A」,「用B」とは何かというと,この場合は,A:「直接的な有用性」または「誰もが認める有用性」,B:「間接的な有用性」または「隠れた,気づきにくい有用性」である.つまり,「無用の用」とは,「一見無用のように見えても大切なものごとがある」といいうことだ・・・でいいですね?

 なら,矛盾した言い方などせずに,最初からそう言えよと,文句の一つも付けたくなりますが,ただ,ちょっと気をつけておきたいのは,「有用性」と言ったとき,それが,A,Bともに同じものに対する有用性を言っている場合と,違うものに対する有用性を言っている場合があって,どうも,「無用の用」と言った場合には後者の場合が多いらしいことです.
 たとえば,「休日というのは無用の用だ」と言った場合,
ア:「経済的効率から見ると休日は一見無駄のように見える.だけど,適度な休息がないと仕事の能率が落ちるので,経済的効率を保つためには無駄なように見える休日も実は必要なのだ」という意味と,
イ:「人間には,実は,経済的効率より大切なことがあって,休日はそのために必要なのだ」という場合があります.
 前者の場合は,目的(経済的効率)は明確だけど,それに休日がどう役に立つのかが見えにくいということですが,後者の場合は,目的自体(「経済的効率より大切なこと」)が見えにくいことを言っているわけです.つまり,一般に認めれれている価値を否定すことに力点があるわけで,それが「無用の」という言い方になるのでしょう.
 「無用の用」といわれたとき,その辺のことは誰でもなんとなく気づいているものでしょう.だけど,「無用の用」という言い方を矛盾のない形に直そうとするとき,うっかりするとこのことを忘れてしまいそうな気がします.

【補足】
え~~,実は今回は,才市さんの口あいを一つあげて,無用の用の話をして,「義なきをもって義とす」という言葉に移り,さらに親鸞聖人があるお手紙では「これすなはち他力のなかの他力なり」とおっしゃっていながら,別のお手紙では「他力のなかにまた他力と申すことはきき候はず」と矛盾するようなことをおっしゃっているのはどういう意味かという話をして,最後に一茶の引用で終わる・・・というつもりだったのですが,無用の用で力尽きました(^^;).続きは次回・・・,いや,残りの話はもっと簡略にして仕切り直すかもしれません.

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