まかぬたね まいた覚えのないたねが
こころに生える なむあみだぶつ
(楠, 三, p.288)
前回の口あいを補足するような口あいです.
私の心に信心が芽生えた,でもその種は自分がまいたものではない(阿弥陀さまによってまかれたものだ)・・・という意味ですね.
“まいた覚えのない種が心に生える”という言葉から,阿闍世王が,お釈迦さまの導きによって芽生えた信心を「無根の信」とよろこんだことを思い出しました.
私の心に信心が生じたのは,伊蘭《いらん》という悪臭を放つ植物の中から,栴檀《せんだん》という良い香のする樹が生えたようなものである.私の信心は,私のうちに根(原因)を持たない,いわば無根の信である.
(阿闍世王の言葉.大意)
【補足】
楠, 三, p.288: 楠恭編『妙好人才市の歌 全』の三, p.288(三の第11ノート, 22番).
阿闍世王の言葉は『真宗聖典 注釈版』, pp.286--287より.
なお,本年度の才市顕彰法要には,龍谷大学の鍋島直樹先生をご講師としてお迎えいたしますが,その鍋島先生の『アジャセ王の救い』(方丈堂出版, 2004年)に,阿闍世王のことが詳しく説かれていますので,是非ご一読を(以前,ご紹介した本です).