山科の本願寺で蓮如上人のご法話があったとき、あまりにもありがたいお話であったので、これを忘れるようなことがあってはならないと思い、六人のものがお座敷を立って御堂へ集まり、ご法話の内容について話しあいをしたところ、それぞれの受け取り方が異なっていました。
そのうちの四人は、ご法話の趣旨とはまったく違っていました。聞き方が大切だというのはこのことです。聞き誤りということがあるのです。
(『蓮如上人聞書』, 49)ご法話をされた後で蓮如上人は、四、五人のご子息たちに、「法話を聞いた後で、四、五人ずつが集まって、話しあいをしなさい。五人いれば五人とも、決って自分に都合のよいように聞くものであるから、聞き誤りのないよう十分に話しあわなければならない」 と仰せになりました。
(『蓮如上人聞書』, 119)
前前回の記事にいただいたコメントで,上の蓮如上人のお言葉を思い出しました.「話しあい」と現代語訳されているのは,蓮如上人のお言葉では「談合」です.“談じ合うこと”ですから,決して悪い意味ではないのに,不心得者のせいで,いやな意味になってしまった言葉ですね.本来のいい意味でせっせと使って,名誉回復しましょう・・・と蟷螂の斧を振り上げておきます.
さて,「自分に都合のよいように聞くもの」で,ずっと昔に見た,TVコマーシャルを思い出しました.ちょっとタバコにも見える棒状のチョコレートの宣伝です.
女がチョコレートの小箱をとりだし,中から一本抜いて食べようとする.と,さっきからチラチラ様子を窺っていた男が,さっとライターの火を差し出す.チョコレートはグニャリ.男は一瞬驚いた顔をして,すぐに笑う.女も微笑む.
この場面が二度繰り返されます.一度目は男のナレーション,二度目は女のナレーションをつけて.
男の方は:
びっくりしたけど,すぐ機転を利かせて,ジョークですよ,と笑って見せたんだ.女も,ジョークの分かる人って感じで面白がっていたよ.
なんて言ってる.続けて女の方は:
私がチョコ食べようとしたら,タバコと間違えてライター差し出すの.ヘラレラ笑って誤魔化してけど,あれでカッコいいつもりかしら・・・.
【補足】
『蓮如上人聞書』:『蓮如上人御一代記聞書(現代語版)』(本願寺出版).引用は,p.40,p.81.『真宗聖典 注釈版』では,p.1248,p.1270.
(49)一、山科にて御法談の御座候ふとき、あまりにありがたき御掟どもなりとて、これを忘れまうしてはと存じ、御座敷をたち御堂へ六人よりて談合候へば、面面にききかへられ候ふ。そのうちに四人はちがひ候ふ。大事のことにて候ふと申すことなり。聞きまどひあるものなり。
(119)一、前々住上人(蓮如)御法談以後、四五人の御兄弟へ仰せられ候ふ。四五人の衆寄合ひ談合せよ、かならず五人は五人ながら意巧にきくものなるあひだ、よくよく談合すべきのよし仰せられ候ふ。
直りかけていた腰痛が,宿直明けから再発しました.金曜の朝,自宅までの道のりが遠かったこと.昨日,今日と寝てました.彼岸法座はどうしたって? 坊守が勤めました(^^;).というわけで,今回も,何となく尻切れにおわりました.
こんばんは.
そうそう,「示談」もそうですね.“ご法話のあとに御示談の時間があります”と言われて,“お念仏,9回にまけといて”と阿弥陀さんと話をつける時間と誤解する・・・なんてことはないでしょうけど.
「おとましい」という言葉は初めて聞きました.こういう地域ごとの言葉は感覚と密着していることが多いので,大切にしたいですね.
ちょっと話がずれますが,私の父や祖母は,「ヨツボ(夜壷?)をたたく」という言い方をしていました.夜更かしすることです.
用例(^^):“報恩講の準備は早め早めにしとかんと,前の晩に,また,ヨツボたたくことになるけ”
「夜更かしする」よりもずっと情緒的(?)で,夜遅くまでゴソゴソ・バタバタして・・・という感じです.私は,夜遅くまで仕事をしているときなどに,「ヨツボ叩いてどんじゃらほい」なんて一人でボソボソ歌ったりしてますが,これって方言?
よつぼ は初めてききましたね。なるほど
報恩講の季節が近ついてきましたね。北陸の方はもう済んだ寺も多いでしょうが、三河ではこれからです。お斎の大根が美味しくなる季節です。
安楽寺さんは いつでしょう?
西臨寺さんの報恩講の案内に「あったかい物を用意してお待ちしています」との添え書きがあったことを思い出しました。ほのぼのしますね。
現在開催中の 組の「心の元気塾」の座談のなかでこの 聞書き の話をしました。蓮如さんの息子さんたちですら、おのおの勝手な解釈をしているのだから、私たちなどはどれほど勝手な聴き方をしていることやら。談合しなくっちゃ!!
こんばんは
談合、示談などの言葉は本来の意味と全く違う受け取りをされていて
かわいそうですね。これも本当の意味を知っている私たちが正しい使い方をいつもしていないことに原因があるようですね。言葉は使わないと死滅すると言われています。短い言葉で多くの思いを伝えられる言葉を死滅させないように使いましょう。
この地域では 勿体ない という意味で おとましい という言い方をします。床に落ちたご飯粒をこう言いながら口に運んでいたオバアサンを思い出します。