中学生の女の子3人が食い逃げをしたというニュースがありました.友人に「座敷の窓から逃げられる店がある」と聞いて,やってみたらつかまったというお粗末. ‘しゃぶしゃぶ,鉄火丼,パフェなど計32品(約2万円相当)’ というのが哀れを誘います.
成功していたら,昨日はうまくいったねぇ,得したねぇと3人で喜び合うのでしょうか.つい,そんな場面を想像してしまいました.中学3年生,他に,楽しいことやうれしいことがいっぱいあるはずなのに,パフェなんかを食い逃げできたことを喜び合う・・・惨めというか愚かというか.自ら糞尿をすすって喜んでいる姿です.
と,人のことはよく見えるますが,では,自分がそうでないといえるでしょうか.
『往生要集』の中に描かれている地獄の中で,一番身につまされるのが「刀葉林」という地獄です.
葉っぱが刃のようになっている木の上に美人が座っていて,誘うように微笑んでいる.それを見て,葉っぱの刃で身体が切り裂かれるのも厭わずに登っていくと,美人は木の下に移動している.そこで,また身体を切り裂かれながら木を降りると,美人はまた,木の上にいる.これを際限なく繰り返すという地獄です.
たぶん,本人は一生懸命で,これが地獄の責め苦とは思っていないのでしょう.このくらいの苦労は生きている充実感,なんて思っているかもしれません.それが一番悲惨です.そして,これが,死んで落ちる地獄ではなく,今,この世界における私の姿ではないでしょうか.
【補足】
食い逃げ事件の記事:
「中3少女4人、しゃぶしゃぶ食い逃げ容疑 2万円分」
asahi.com, 2010年2月9日22時10分 付け
http://www.asahi.com/national/update/0209/OSK201002090103.html
『往生要集』上,厭離穢土,地獄,衆合(『注釈版 真宗聖典 七祖篇』pp.803--804)
また獄卒、地獄の人を取りて刀葉林に置く。かの樹の頭を見るに、好き端正にして厳飾の婦女あり。かくのごとく見をはりて、すなはちかの樹に上れば、樹の葉は刀のごとくして、その身肉を割く。次にはその筋を割く。かくのごとく一切の処を劈き割りをはりて、樹に上ることを得をはりて、かの婦女を見れば、また地にあり。欲の媚たる眼をもつて、上に罪人を看て、かくのごとき言をなさく、「なんぢを念ふ因縁をもつて、われこの処に到れり。なんぢ、いまなんがゆゑぞ、来りてわれに近づかざる。なんぞわれを抱かざる」と。罪人見をはりて、欲心熾盛にして、次第にまた下れば、刀葉、上に向かひて、利きこと剃刀のごとくして、前のごとくあまねく一切の身分を割く。すでに地に到りをはりぬれば、しかもかの婦女はまた樹の頭にあり。罪人見をはりて、また樹に上る。