多湖輝「頭の体操」シリーズは今でも読まれているのでしょうか.第1集が出たのが1966年,その後第23集まで続編が出たそうです.子どもの頃,家に第1集と第2集(?)があって,この2冊は愛読しました.その後,論理学やパラドクスの本が好きになったのは,この本のせいかもしれません.
有名な,三人の学生が払った3万円から
千円が消えた話とか,三人の囚人が帽子の色を当てる問題(いろいろヴァリエーションがあるようです.
その一例)なども,この本で最初に読んで強い印象を受けました.
それ以外で記憶に残っているものに,
(1) この世で一番大きなものを食べたという法螺合戦をして拙僧を負かした者には褒美を出すと言う坊主.どんなことを言う挑戦者でも,坊主はただ一つの返答で撃退した.坊主のその返答とは.
(2) 頁の上部にヌードの女性の絵,下部に上を見上げている男数人の絵が描かれている.さて,この女性を一番熱心に見ているのはだれか.
というのもありました.これは二つとも似たところがありますね.
さらに,こんなのがあったのを思い出しました.
「わが社の新型カラーテレビの映像の美しさを見てください」と,その画面を示して,テレビで宣伝することは意味があるか? つまり,その宣伝を見ている人は,画質の悪い古いテレビを通して見ているわけです.それで,新型テレビの美しさがわかるだろうか?
こんなことを思い出したのは,NHKが盛んに流している8Kテレビ放送の宣伝を見たからです.同じ画像を,2k,4k,8kで示して,8kが如何に鮮明か強調しているのですが・・・.その画像を私は2kで見ているわけです.8k画像の美しさが2kテレビで分かるのでしょうか? 宣伝画像はいかにも8kが美しいようになっていますが,これって・・・? おそらく,大きな映像のごく一部を切り取って拡大する・・・そんな操作を,2k,4k,8k画像に施したものなのでしょう.だから,嘘ではないけど,これって,なんとなく,例のスタップ細胞騒ぎを思い出しませんか.あの時も,比較しやすいように画像処理してそれを黙っていたら,学術論文ではそれは偽造に等しいって批判されたのでした.NHKのあの比較写真には,「写真はイメージです」って注意書きを付けるべきじゃないでしょうか.ねぇ,NHKさん?
【補足】
えっと,この「補足」の後の方に(1)と(2)の答を書きます.知りたくない方はこの辺で止めておいてください.
ちょっと行数稼ぎ・・・.今回は,まぁ,半分冗談です.TVのCMに一々イチャモンを付けているときりがない.すべて,話半分,冗談半分として見るべきものと思っています.ただ,天下のNHKがあそこまで大々的にやっているのがちょっと可笑しかったので・・・.
でも,「写真はイメージです」って断り書きの文句,広告の文として傑作かもしれません.
さて,(1)と(2)の答です.知りたくない方は読まないでください.
(1) どんな法螺を吹いた人に対しても,「そう言うお前を,わしゃ喰った」と返答した.
(2) あなた(答えようとして絵を熱心に見ている読者).
いずれも自分の存在を忘れている点を突いた問題です.因みに,ずっと後,コルタサル「続いている公園」を読んで,(2)の解答を読んだときの驚きを,もっと何倍にもしたような驚きを受けました.