ごくらくは ほんらい おやのさと
おやのさとこそ わしがさと
なむあみだぶと もうすさとなり
(才市さん,『ご恩うれしや』)
「地獄の生まれ」(才市さん)である私は,お浄土出身ではありません.それにもかかわらず,お浄土を「私のふるさと」と呼んだり,「お浄土にかえる」という言い方をすることがあります.この口あいでは,そのことを,お浄土は親のさとだから,自分のさとでもある,と歌っています.
この「親」というのは阿弥陀様のことでしょう.才市さんの口あいに,お浄土に行ってみたら,自分のところの阿弥陀さんは門番をしていて,こちらの姿を見るなり,よう来た,よう来たと迎えてくれた,という意味のものがありますが,そうやって「親」,つまり阿弥陀様が迎え入れてくださることによって,お浄土を,私の未来の故郷にしていただいた,という口あいです.
もっとも,この「親」を実際の親と味わえないこともありません.私の父・母は,すでにお浄土に往生し,そこで私を待っていてくれる.だから,お浄土こそ,私がかえる故郷である,と.
【補足】
『ご恩うれしや』: 石見の才市顕彰会編『ご恩うれしや』.
「地獄の生まれ」(才市さん):こちらで紹介しました.なお,別ヴァージョン(?)として次のような口あいもありますが,以前ご紹介した方が口調は良いように思います.
こころは娑婆の旅
わしのこころは地獄の生まれ
旅犬が尾をすべて
浮世をすごす
なむあみだぶつ
(鈴木大拙編著『妙好人浅原才市集』, ノート29の22番, p.415)
「阿弥陀さんは門番」:こちらで紹介しました.