「嘘も百回言えば本当になる」という言葉があります.ナチス・ドイツの誰かがそう言った,あるいは,実行したという話ですが,最近では,海の向こうの大統領との関係で言及されているようです.
もう少し,お上品(?)な方法として,「99の本当の中に1つの嘘を混ぜる」という手があるそうです.だれもがうなずける話をして相手の信頼感を得たところで,本命の嘘をちょろっと混ぜる,という手です.
こちらの方は,最近,また話題になりそうな教育勅語との関係で思い出しました.
この教育勅語について,
“両親を大切に,兄弟は仲良く,・・・全人類は皆兄弟,勉学に励み,自己啓発と人格向上に努め・・・と誰もが肯ける徳目を並べ,それを,天皇のために死ね,という話に上手につないである.そういう意味ではみごと”
という評を聞いたことがあります.
こちらに教育勅語の原文と,そこに述べられている12の徳目が分かりやすく要約してありますが,たしかに,上手ですね.12の徳目の選び方やその順序と枠の部分とのつなぎ方など,「99の本当の中に1つの嘘を混ぜる」お手本のような文章です.
“教育勅語にも良いことも書いてある”というのは,そういう策略に見事にひっかかているか,あるいは,策略に気付かぬふりをして策略の片棒をかついでいるか,そのどちらかということになると思いますが,最近,教育勅語に“一定の評価”を与えている人はどちらなのでしょう?
【補足】
要旨を引用した教育勅語への批判はどこで読んだものか忘れました.正確にこの通りだったかどうかも分かりません.ずっと昔,20年か30年前に聞いたような気がします.
因みに『軍人勅諭』も読みかけたことがありますが,こちらは長くて放り出しちゃいました.立派な帝国軍人にはなれないようです.
教育勅語については,国家が個人の領域に干渉しているという批判もありますが,その点は今回は論じません(それで思い出しました.田中角栄首相が,「五つの大切,十の反省」(?)みたいなことを言ったことがありましたね.そこで言われている内容自体は文句のつけようのないことだったと思いますが,首相の地位にある人が,他人の道徳の領域に踏み込んだという点で批判がありました.その時,教育勅語も引き合いに出され,上のような教育勅語批判を聞いたのかもしれません.その田中角栄氏,政治家が道徳を説くのが如何に醜悪な結果に終わるか,身をもって劇的に示してくれました.そういう点では感謝すべきかな?).