祖師さまは
弥陀のご恩を とをとむ(尊む)知識
とをとがらする わたくしにも
ご恩うれしや なむあみだぶつ
(才市)
今年の報恩講の案内に引用した才市さんの口あいです.おおよその意味は:
祖師さま,つまり,親鸞聖人は,まずご自身が阿弥陀様を尊ばれるような知識(先生)だった.そして,そういう先生のお姿によって,私も阿弥陀様のご恩を喜び尊ぶようにならせていただいた.阿弥陀様のご恩も祖師様のご恩もともにうれしく,ありがたい・・・
というところでしょうか.
報恩講にお参りし,阿弥陀様の前で手を合わせるのも,自分の意思でやっているつもりでも,実は,御開山さまをはじめとする数多くのご縁によるものでした.そんなご縁を喜び,そして,御開山さまと一緒に阿弥陀様のご恩を喜ばせていただきましょう・・・そう,味あわせていただきました.
報恩講では,長門市浄土寺の荻隆宣師にお取次ぎをいただきました.荻先生は私のフタイトコにあたり,それぞれの祖母が姉妹です.そんな関係もあってか,「おばあちゃん」にまつわる話をしてくださいましたが,自分のお念仏はおばあちゃんのお念仏だというお話が印象に残りました.合掌・礼拝の時のお念仏の称え方は,人それぞれ,微妙なクセがありますが,先生のお念仏はおばあちゃんの称え方と同じだそうです.というのも,子供のころ,おばあちゃんについてお念仏したから,というお話でした.
宗教のように,生き方の基本姿勢に関わるような事柄は,理論的に学ぶというよりは,だれか具体的な人,自分にとって大切な人,尊敬できる人のまねをすることを通して身についてゆくということが大切なのかもしれません.「薫陶」というのは私の好きな言葉ですが,これも,「教え授ける」といういうより,敬愛する人のそばにいて,自ずとその人の香りが移るという感じですね.
この夏,『植物男子ベランダー Season 2』というシリーズをNHKでやってました.そのなかの第9話「俺の伯父さん」で,“懐かしい,敬愛するおじさん”が描かれていました.そのおじさんの影響で植物が好きになり,植物や,命あるものに接する態度を教えられた.そんな伯父さんとの別れ.「おじさん,ありがとう.そして,さようなら」.
尊敬できる人,懐かしく思い出せる人に出会えたことは幸せなことなのだと改めて思いました.
御開山さまも[を] こいしくば
なむあみだぶを とのうべし
(才市)
【補足】
「祖師さまは」: 鈴木大拙編著『妙好人浅原才市集』(春秋社), p.23, ノート2の49番.
「御開山さまも」: 才市顕彰会編『ご恩うれしや』, p.46.
今年も12,13日と報恩講を勤めさせていただきました.今年も,と言いましたが,私にとっては3年ぶりの報恩講でした.一昨年は入院中,昨年は自宅療養中でパス.それでも,報恩講自体は,近隣寺院のご法中や門信徒の方々のお蔭で,休まずに続けることができました.久しぶりに報恩講で住職の役を勤めさせていただいて,住職不在中も,途切れることなく報恩講が続いたことのありがたさを改めて痛感しました.
『植物男子ベランダー Season 2』についてはこちらを.