安楽寺仏教婦人会による,恒例,春の給食サーヴィスを先日行いました.これは,以前にもご紹介しましたが,お一人で,あるいは,年寄り夫婦だけで暮らしているお年寄りに,春と年末,お弁当をお届けするものです.
今回のメニューは,ちらし寿司.写真は
最終工程(?)の場面です.この後,お昼ごはんに間に合うよう届けることができました.
包装紙に,次のような文章をつけさせていただきました.
春らしい日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。桜はもう終わりましたが、花ざかりの季節はまだまだこれから。ハスの花にはまだ間がありますが、こんなお話があります。
ある時、インドの小さな村に一人の少年がいました。彼は、お坊さんから
「しっかり勉強し、正しい行ないをし、人のために働くような人には、林の中の池に、ひっそりと咲いているハスの花ひとつひとつの上にも、仏さまがすわっていらっしゃるのが見える」
と聞かされ、
「それが見えたらどんなに素晴しいだろう」
と、勉強と修行の旅に出ました。
やがて、勉強と修行を終えてふるさとの村に帰ってきた少年は、まっすぐ、林の中の池に行きました。そこには昔と変わらず、ハスの花がたくさん咲いていました。そして、やっぱり、仏さまはおられませんでした。でも、ハスの花はとてもきれいでした。池も林も空も以前よりきれいに見えました。彼は、微笑んでつぶやきました。
「ほとけさまが見えるって、こんなことかもしれない」
才市さんには、こんな口あいがあります。
才市ゃ なにがおもしろい
まよいの浮世が おもしろい
法をよろこぶ たねとなる
なむあみだぶの 花ざかり
私たちのこの世界は迷いの世界です。それはお念仏を称えても変わりません。しかし、そんな迷いの世界だからこそ、「必ず救う」という南無阿弥陀仏の声が隅々まで満ちあふれ、お念仏が花盛りになるのです。それに気付かされた時、この世界が、変わらないままで、でも、「まよいの浮世がおもしろい」と見えてくるのではないでしょうか。
ささやかですが、安楽寺仏教婦人会からお弁当をお届けします。今回も社会福祉協議会のご援助を頂きました。ありがとうございました。 合掌
二〇一四年四月二十九日
安 楽 寺 仏 教 婦 人 会
(安楽寺住職 梅田淳敬 記)
【補足】
ある少年の物語は,善財童子(華厳経)の物語ですが,“ハスの花の上に仏様が見える”とか,“世界がくっきりと美しく見えることが,ほとけさまが見えるということ”という言葉は,華厳経にはなかったように思います.これらの言葉は,ある方が童話風にかに直されているもので読んだように思いますが,ちょっと出典がはっきりしません.
引用した才市さんの口あいは,『ご恩うれしや』, p.239. このblogでは,ずっと以前にご紹介したことがあります.
2014.05.06 訂正・追記
善財童子の話は法華経ではなく,華厳経でした.失礼しました.上の通り,訂正します.
詳しくは,『華厳経』第34の11~34の16(「入法界品」)です.私が参照したテキストでは,『国訳大蔵経』(国民文庫刊行会, T.8[1919]) , 第7巻, pp.174 -- 591.ただし,途中は適当に流し読み(^^;;).
出典を詳しく書く理由は,読んでくださった方が確認しやすいように(最近話題の言い方を借りれば,第3者が “追試” しやすいように)ということが第一ですが,もう一つ,勘違いを防ぐという意味もありますね.私自身,出典を明記するために元の本に戻って,とんでもない勘違いに気付いたということが何度もあります.今回は,大元はあの本,ということは分かっていたのですが,それが離れたところにあって,見に行く手間を省いた結果,法華経などと書いてしまいました.本そのものを手に取っていれば,絶対にない間違いです.やれやれ.横着はいけませんね.