わたしゃ あなたの わのなかで
十方世界の わのなかで
なむあみだぶつ なむあみだぶつ
楠 三 p.115(三の第5ノート)
この歌の「あなた」が阿弥陀様であることは言うまでもありませんが,「あなたのわのなかで」,「十方世界のわのなかで」とはどういう意味でしょうか.
‘阿弥陀仏に摂取されていること’と受け取っていいのかもしれませんが,「あなたの中で」と言わず,「あなたの輪の中で」と言った理由が気に掛かります(因みに,「輪の中で」と言っている才市さんの他の歌はちょっと思い当たりません).才市さんは,お聴聞で聴いたと思われる言葉をそのまま用いていることがよくありますので,こんな言葉の出てくるご法話を聴聞されたのかもしれません.「輪の中」で連想されるのは,ご和讃の「法身の光輪」とか「百重千重囲繞して」ですが,さて・・・.
私がしばしば寄らせてもらっている「浄土真宗やっとかめ通信(東海教区仏教青年連盟)」に梯實圓和上の次の文が引用されていました.
信心の行者が,煩悩具足の身のままで摂取の心光の中に摂取せられているということは,阿弥陀仏を中心として十方世界に展開する諸仏・諸菩薩・諸天善神・十方法界同生者・十方衆生といった,壮大な尽十方無碍光如来の秩序の中に収められて,その存在が意味づけられていくということであった.
(梯 p.306)
この言葉からは,阿弥陀仏を中心とした同心円的な構造が思い浮かびます.才市さんも,こんなご法話を聴聞されたのでしょうか.
これは,単なる空想です.何かご存知のかたがいらっしゃいましたら,ご教示ください.
【補足】
楠 三:楠 恭 編『定本 妙好人才市の歌 全』の三
浄土和讃(120)
南無阿弥陀仏をとなふれば
十方無量の諸仏は
百重千重囲繞して
よろこびまもりたまふなり
(『注釈版聖典』p.567)
「浄土真宗やっとかめ通信(東海教区仏教青年連盟)」の次の頁
http://www2.big.or.jp/~yba/QandA/01_10_15.html
梯:梯 実圓『教行信証の宗教構造』(法蔵館, 2001).
ついでに:以前ご紹介した「ご開山様も恋しくば・・・わしも六字のうちにこそ住み・・・」も,元歌があるようですが,確定できずにいます(親鸞聖人? 蓮如上人?).これも,どなたか,ご教示いただけませんか.