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ある占い師の話
旧ブログ 2011年12月29日 (木)

 長らくご無沙汰しました.何となく滞っています.どうも,年内にまともな更新もできそうにない感じなので,前回の“魔の金曜日”に触発されて,ずっと昔に書いたものをあげておきます.

 昔々,中国に一人の占い師がいました.その占いは非常に良く当たると評判で,大商人や重職にある役人,あるいはその夫人などが助言を求めて彼の屋敷に出入りしていました.その名声は広く知れ渡り,経済的にも豊かで,壮大な屋敷を構え,多くの弟子と使用人を擁していました.因みに,当時の中国では,大地は水の上に浮いていると考えられていて,彼の占いもその世界観に基づいていました.
 あるとき,この占い師の下に一人の若者が弟子入りしました.非常に優秀で,師の教えを我が物にすること,海綿が水を吸い取る如し.めきめきと占いの腕あげてゆきました.優秀な弟子を得て喜んでいた師も,その余りに急速な上達ぶりにやがて不安を覚えるようになります.自分の跡継ぎにとも思っていたが,自分が引退する前に今の地位を乗っ取られるのではないかと.若者の名声が高まるにつれ,その不安は大きくなり,ついに,この優秀な弟子を亡き者にしようと決意するに至りました.
 しかし,おめおめ殺されるような弟子ではありません.彼は,習い覚えた占いによって師の意図を察知し,屋敷を逃げ出します.それを知った師は,逃げる先を占って後を追う.弟子は弟子で,追手の情況を占ってその裏をかこうとする・・・.ここに占い合戦がくりひろげられることになりました.
 やがて,大きな川にかかる橋にさしかかった弟子は,何を思ったか,下駄に履き替え,橋の下にぶら下がってじっとしています.
 さて,こちらは追手を指揮する占い師.いつものように弟子がどこでどうしているか占っていましたが,やがて,ほっとしたように言いました.彼はもう死んでいる,これ以上,追わなくてよいと.占いによれば,彼は今,木の板の上,土と水の間にいる.土と水との間にいるということは,土中深く埋められているということだ.体の下の板は棺の板である.つまり,かれは死んで埋葬されているということだ・・・.
 こうして弟子は無事逃げおおせることができたのでした.メデタシ,メデタシ.

 この場合,占いは外れたのですが,“当たる”のも似たような事情ですね.曖昧な言い方をしておくと,都合のいいように理解して“当たった”と思う.占いとか予言というのはたいていこの類だろうと思います.曖昧な壁のシミに人の顔を見るのと同じです.

【補足】
 上の中国の話,平凡社から出ている「東洋文庫」の一冊で読んだような気がしますが,確認していません.昔自分で書いた文章も見ていません.記憶で書き直しました.というわけで,今回ご紹介した話には,記憶違いがあるかもしれません.

 ノストラダムスの予言って覚えていますか? 私が寺田寅彦の文章や,上の説話(?)を読んだのは,1999年に恐怖の大王が降臨するとかどうとか,五島某があることないこと書きまくっていた頃です.ノストラダムスのことは渡辺一夫氏の著作によって読んでいたせいもあり,あの人のデタラメぶりとあの喧騒にはホトホトあきれ果ててました・・・なんて言いながら,実は,当時(そして今も),この手の話を面白がって追っかけていたわけで,我ながら物好きだなぁとは思います.
 「ある占い師の話」とは,その渡辺一夫氏のエッセイの表題をお借りしたものですが,この占い師がノストラダムスだったかどうかはっきり覚えていません.当時は,占い師がうじゃうじゃしてましたし・・・.

 最近,ノストラダムスの生涯を描いたフランス映画(?)をヴィデオで見ました.恐怖の大王の支配とはナチスドイツによる支配で,ノストラダムスはそれをありありとした幻覚として見ていたという話でした.16世紀フランスの風景の中に,近代兵器で武装した軍隊がいきなり現れたりして,近代的軍隊の非情さが際立つなかなか印象的な映像でした(でも,マイナー映画です,多分.やっぱり物好きだなぁ).

コメント

こんにちは こちらも やっとかめ(八十日目)です。おひさしぶり
先日叔母の三十五日法要(この地域では忌明けを四十九日にすると
三ヶ月に渡ることがあるとして・みつき・身につく・ごいうごろを採用して
三十五日でお勤めします)の今や法要会か食事会のどちらに重きがあるかわからなくなりつつある食事会で喪主の弟がデジカメの映像を見せてくれました。葬儀のスナップでしたが、心霊があちこちに写っていると周りで
盛り上がっていました。たしかにそう言われてみるとそんなもんかとも見えますが、仮に先祖の霊が現れているとしても、怖がることはありません、先祖が子孫に災いを及ぼすことはありません、私たちが心配で仕方なく現れているのだと言うことで、一件落着いたしました。還相回向の話をすればよかったと思っているところです。
寒くなりましたね、良いお年を!!

破旬さま,こんにちは.
おさびしい年の瀬をお迎えのことと思います.

「身につく」については,1,2度尋ねられたことがありますが,こちら(少なくとも私の周り)では,そんなこと気にしない,で済ませています.こういうことに関しては,地域によっていろいろですね.

 心霊写真の件,還相廻向のお話をされなかったのは,“正解”だったかもしれません.ああいう形で盛り上がっている場面で還相廻向のことを誤解されずに伝えるのは難しそうだと感じました.
 ちょっと話はずれますが,こんなブログ記事がありました(破旬さんもコメントをつけていらっしゃる記事です).
http://blog.goo.ne.jp/rockwin18/e/9335ed739647485fdff46925481fced3

>亡くなったオジさんがその辺りに フワフワと 降りてきたような気がしました

に対して,“そうそう,そうなんですよ” って言っとけば,“ありがたいお坊さん”ということで落ち着くのでしょうけど,そうではなくて,“霊媒師ではないぞ” って言わなきゃならないのが,つらいところ(?)です.

では,よいお年をお迎えください.

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