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「地獄に対する恐怖ゆえに」
旧ブログ 2011年9月 7日 (水)

 先日,ある小説を読んでいたら,スピノザの言葉として次のような引用がありました.

真に神を愛するものは,神から愛し返されることを期待してはならない

 昔読んだある短い物語(?)を思い出しました.

 ある晩,フランスの聖王ルイ九世はシャルトルの司教イヴォを遣いにやったが,戻ったイヴォは国王にこう語った --- 道中,片方の手に松明を持ち,もう一方に水瓶をかかえた,しかつめらしくも毅然たる物腰の年かさ女に出逢いました.いかにも敬虔そうな,しかし愁いに満ちた彼女の顔が,同時に何か夢見るように輝いていましたので,私は彼女に,その両手のものが何を意味するのか,また,その火と水で何をしようとしているのか,と尋ねてみました.答えはこうでした --- 水は地獄の業火を消すため,火は天国を焼き払うためです.私は人々が神を,ただ神の愛ゆえに愛するようになって欲しいのです.
(ボルヘス他『天国・地獄百科』, p. 9)

 『天国・地獄百科』は,天国や地獄に関する言葉を集めたアンソロジーですが,その巻頭にこれが置かれていました.この本からもう一つ:

 主よ,もし私が地獄に対する恐怖ゆえにあなたを崇めているとしたら,地獄の業火で私を焼き給え.また,もし私が天国に対する期待ゆえにあなたを崇めているとしたら,天国から私を追い出し給え.しかし,私が無私の愛ゆえに,あなたを崇めているなら,あなたの不滅の美を私に拒み給うことなかれ
(同上,p.11)

【補足】
 ある小説:ペーター(篠田一志訳)「セバスティアン・ファン・ストルク」(集英社『世界文学全集 42:ボードレール,マイヤー,ペーター』, p.452.).

 ボルヘス他:ボルヘス,ビオイ=カサーレス(牛島,内田,斎藤 訳)『天国・地獄百科』(書肆 風の薔薇, 1982).,上に引用した二つの出典は次のように記されています.
p.9  「無償の愛を求めて」ジェレミー・テイラー 1613 -- 1667
p.11 「ある聖女の祈り」 アッタール『聖人たちの思い出』(12世紀)
 この本のジャケットにある内容紹介に「天国に憧れ,地獄を恐れる(?)全ての読書人に贈る世紀の奇書」と記されています.「(?)」に笑っちゃいますね.確かに,巻頭にあんな言葉があれば,「(?)」をつけざるを得ないでしょう.

コメント

こんにちは
>真に神を愛するものは,神から愛し返されることを期待してはならない

これを真宗的に書き換えると

真に神を愛するものは,神から愛されていることに気付いたものである

となるんでしょうか?

颱風の被害が 諸行無常 を改めて教えてくれます。・・・と他人事のようにしか感じられないことが情けないですが、科学的にも間違いなくこの地域は東海、南海、東南海地震が近いうちに必ず訪れるところですので、何時になるか無常の真ん中に放り込まれる身、今日を大切に生きさせていただきましょう。

こんばんは.

そうか,そうですね,多分.そういえるような気がします(ちょっと自重モード^^;).これについては,続き(のようなもの)を土曜日にupする予定ですので,それをお返事とさせてください(お返事にはなっていないとは思いますが).

今日を大切に,といえば,最近,「ケイコ,春秋をしらず」のセミが気になっています.このセミ君,念仏者のお手本と思っていたのですが,最近,ネットで検索したら,他山の石的な言い方ばかりで,ひょっとして飛んでもない誤解をしていたかと・・・(でも,納得していない).これについても,近々書かせていただきます.その折は,コメントをお願いします.

こんばんは 
ケイコちゃんに付いては 東のケイコさん 川村妙慶(慶子)さんがテレフォン法話で丁度話されていますので、よろしかったらお聞き下さい。もっとも一般の方向きの話ですが・・・
http://aidea1ban.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/index.html
一方 西のケイコさん と言われている 都路惠子さんも「アジャセからの贈りもの」という本を書かれています。二人とも私の知り合い(自分で思っているだけですが)で美人です、検索サイトで写真が出てくると思いますが
よろしかったらお顔もどうぞ??

こんばんは.お返事遅くなりました.

川村妙慶さんのblogは少し前から読ませていただいていますが(破旬さんのblogを見て),このたび初めて声を聞かせていただきました.アナウンサーということもあってか,押しの強い感じの声を想像していたのですが,ソフトで若々しく,失礼な言い方かもしれませんが,可愛らしい感じのお声でした.
内容は,「悩むことが生きる原動力」というお話でした.「慙愧なきものは人にあらず」という言葉がお経にあったと思いますが,それと通じるお話のように聞かせていただきました.ただ,「慙愧なきもの・・・」が下手をすると道徳レベルで受け取られかねないのに対し,妙慶師のお話は,道徳レベルの話をすっと飛び越え,しかも,圧迫感がまったくないご法話で,ありがたく聞かせていただきました.病み付きになりそうな気もしますが,電話代が・・・(^^;).

ps:私の感じだと「かわいらしい」という言い方は,例外的な場合を別にすれば,子供ほどにも年が離れている年下の人に対してでなければ失礼という感じがあるのですが,最近はそうでもないようですね.

おっしゃる通り、ソフトな方です。テレビにもよく出演されているようですが、地上波テレビをほとんど見ないので、まだ画面でお会いしたことはありません。たまにブログで取り上げて欲しいことなどのメ-ルを送るのですが、忘れた頃に返信があります。悩み相談などのメ-ルをかなりたくさん受けられ、相談に乗られて居るようなので、「返信不要」と書くのですが、ちゃんと返事をくれる人です。

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