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[才市] また来たよ 浄土から
旧ブログ 2011年8月13日 (土)

あさましや
親のご恩を忘れて暮らす
どこからか
わしゃ知らねども ご催促
聞いてみれば
なむあみだぶの ご催促
また来たよ 浄土から
(鈴木, p.255)

 「一刀斎」こと森毅氏(数学者)が,中学(?)を受験されたときの面接について,こんなことを書いておられました.

 受験の年は,ちょうど紀元2600年とやかましい年だった.入試の面接でも予想通り「今年はどういう年か」と質問された.予行練習通り「わが国の皇統が2600年も続いた,めでたい年です」と答えた.ところが,「長く続いたからめでたいのなら,毎年めでたいはずではないか.今年だけお祝いをするのはなぜか」と重ねて聞かれた.エッと思って試験官を見るとニヤニヤしている.型通りの質問に型通りの答の繰り返しに,敵さん,うんざりして,こちらをオチョくっている様子.それなら,と「そりゃ,来年はもっとめでたいし,再来年はもっともっとめでたい理屈だけど,そうやって毎年めでたい,めでたいってやってると,人間がおめでたくなって困るから,切りのいいところでお祝いするしかないでしょう」と答えたところ,試験官たちは大笑い.これで受かったと思った・・・.
(要旨)

 実際,合格したそうです.本当かいな,という話ですが,「一刀斎」ならありそうな気もします.

 さて,お盆ですね.お盆にはなくなられた方が帰ってくるなどといいます.でも,私たちは,「南無阿弥陀仏」を称えることによっていつでも先にご往生された方にであっていけます(「六字の内に住む」).ですから,真宗では,お盆だといって特別なことをする必要は本来はありません.お盆だけでなく,毎日,喜んでいればよい.毎日喜ばせていただいても,人間がありがたくなって困るなんて心配もありません.
 しかし,残念ながら,日頃は忘れている.だから,切りのいいところで気づかせてもらって喜ぶしかない.そんなご縁の一つがお盆です.ですから,“ああ,お盆だ,お墓参りしなきゃ”と思ったらどうぞお墓にお参りください.でも,お墓参りをしてオシマイ,ではありません.お墓参りを機縁として,お念仏を称させていただいたこと,そういう縁を先立たれた方に与えていただいたこと,それに気づくことが大切なのではないでしょうか.
 今回の才市さんの口あいは,お盆についての口あいというわけではありません(「親」というのは阿弥陀様です)が,この口あいを借りれば,“浄土からまた来た,なむあみだぶのご催促”の一つがお盆です.

【補足】
 鈴木, p.255:鈴木大拙編著『妙好人浅原才市集』 (ノート16の108).

 森毅氏の逸話:たぶん,森毅『数学受験術指南』(どこかの文庫か新書)で読んだのだろうと思いますが,確認していません.実際は,関西弁(京都弁?)を交えた,もっと軽妙な語り口で書かれていたように思います.

コメント

お盆ですね、私はお盆というと毎年地域の盆踊りに交通整理の仕事が
与えられるので、あまり有り難くはありません。
一刀斉さんは真宗門徒では無い(もっとも子供時代のことか?)のでは?
真宗での法縁はすべて思い出すためにあるようなものですのですね。長いスパンでは大遠忌、短い方では内仏でのお勤め いやいや 一息ごとの呼吸もその間忘れていたことを思い出す法縁でありました。
お盆といえば 墓参り と決まっているようですが、私の手次の寺にはお墓が一基も有りません。寺の住職のお墓も無いのです。市内で全く無いのは
ここだけでしょう。門徒さんにお墓のことで相談されると「必要ない」と言われているようです。従って我が家の代々の遺骨は寺のしゅみ壇の下と本山に有ります。元来この地域は墓の少ないところで、今では言われませんが昔は「お墓なんで貧乏人が作るもんや!」と言われてきたそうです。
その意味は、本来は先祖のお骨は本山の親鸞聖人と同じところに納めるもので、京都までの納骨旅行の費用が無い家が、仕方なく地元の地にお墓を作って納めた訳なんや・・・と
石見のお盆はどんなふうでしょう?
お忙しいと思いますが、お身体慈愛(自愛)されたし!!


 こんばんは.お返事遅れました.
 盆踊りの交通整理,お疲れ様です.
 一刀斉氏の本は何冊か読みましたが,宗旨をうかがわせるような話はなかったような気がします.なんとなく禅宗の雰囲気ですが(無責任な放言)・・・.
 真宗でお墓がないところがあるとは時々聞きますが,釈破さんのところがそうでしたか.「お墓なんで貧乏人が作るもんや!」なんて,大金を投じてミエで仰々しい墓をつくろうとする人への頂門の一針ですね(もっとも,ささやかなお墓でも地域によってはお金がかかる昨今,親をお墓に入れようと苦労して投じたお金を無駄とは言いませんが).
 こちらのお盆についてはまた,改めて.

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