才市さんに関する基本文献
2014.11.20
才市さんについてはたくさんの本や文章が書かれていますが,ここでには,もっとも基本的と思われる資料をご紹介します.
- 鈴木 大拙 編著 『妙好人浅原才市集』 (春秋社 1967, 新装版 1999年)
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才市さんのノートをできるだけ正確に翻刻するという立場で編集され,注と初句(1行目)索引を備える.なお,本書に収められている「浅原才市略年譜」については,下記,佐藤平「浅原才市年譜」参照.
- 楠 恭 編 『定本 妙好人才市の歌』 (法蔵館, 1988年)
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もともと3巻本として出されたものの合本.なお,余計なことだが,合本に際してページ番号(ノンブル)を打ち直してないので,たとえば,“本書の2頁”は5箇所ある.引用の際には注意が必要.
- 妙好人 石見の才市顕彰会 編 『ざんぎとかんぎ 妙好人・浅原才市の歌』(妙好人 石見の才市顕彰会,1991)
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1980年代に存在が知られるようになった才市さんのノート2冊を収める.
才市さんの口あいは,この3冊にほぼ網羅されている.いずれも,才市さんのノートなどから直接起こしたもの(一部に例外あり)で,才市さんの口あいの出所をたどっていくと,ほとんどの場合,この3冊(または次の『浅原才市翁を語る』)のどれかに行き着くことになると思われる.
- 寺本 慧達 著 『浅原才市翁を語る』 (東京千代田女学園, 1952年)
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才市さんを直接知る人が自分の見聞を元にしてまとめた刊行物としては唯一のもので,伝記的な事項についてもっとも重要な資料である(もちろん,史料である限り史料批判は必要で,その一例は下記佐藤論文を参照されたい.著者ご自身が見解を訂正している部分もある).また,才市さんが口あいを記した最初のノートは行方不明になっているが,そのノートの写真を掲げ,そのノートから多数の口あいが引用されている.それらの口あいについては本書が根本資料ということになり,その点でも貴重である(ただし,上記楠氏の本にも,このノート所収の口あいが収められていて,それらは,このノートから直接抄録された可能性がある.また,このノート本文を撮影したフィルムがあるという.上記,楠『妙好人才市の歌』三のpp.39--42参照).
- 『妙好人・才市さんの世界』 (本願寺出版部, 1981年)
- 後半(pp.195--255)に「才市さんの言行録」(藤谷法叡)と,「座談会『才市さんを偲ぶ』」(文・石橋泰範)が収められている.「言行録」は藤谷氏による聞書集で,ほとんどの項目について話者が明記されている.「座談会」は,才市を直接知る人々の座談会.
- 佐藤 平 著 「浅原才市年譜」
(『大谷女子大学紀要』第20号, pp.30--49, 1986)
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上記,鈴木大拙 編著 『妙好人浅原才市集』の編集実務に当たられた佐藤平氏 (釈 顕明師)が,その編集を縁として始められた調査結果をまとめたもの.涅槃寺・安楽寺・地元・才市さんの遺族などに残る資料や口伝,(遺族から提供された)浅原家戸籍などを幅広く検討し,さらに才市さんが出稼ぎにいっていた九州まで調査の足を伸ばすなど,綿密で広範な調査を行い,その結果を根拠を明示してまとめたもので,現段階では,もっとも詳しく信頼できる年譜(伝記)である.
- 高木 雪雄 著 『才市同行 才市の生涯と周縁の人々』 (永田文昌堂、1991年)
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才市さんの師匠寺,涅槃寺住職(当時)による評伝で,一番基本になる文献であるはずだが,上の佐藤論文といくつかの点で重大な喰い違いがある.佐藤氏は涅槃寺に残る資料を閲覧し,高木雪雄氏にも聞き取りを行って寺本氏の所説に訂正を加えている.そのこと念頭に,本書と佐藤論文とを綿密に読み合わせると,本書の記述には不可解な点が多い(たとえば,「こざるのやうな」の詩についての説明).また,豊富な資料が示されているようでありながら,注意深く読むと,肝心なところで資料的に曖昧なところがある.典拠とするにあたっては細心の注意を要する(と思います=文責:梅田淳敬).