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[才市] 念仏は親の呼び声
旧ブログ 2017年2月21日 (火)

なむあみだぶつ なむあみだぶつ 
念仏は 親の呼び声 子の返事 
なむあみだぶつ なむあみだぶつ
(才市,『ご恩うれしや』, p.144)

 “朝ドラ”の『マッサン』はご覧になられたでしょうか. 勤め人には見るのが難しい時間帯ですが,私は,これが始まって間もなく,一日中テレビ見放題という環境になりましたので,途中から見始めました(その後,環境が変わったので,最後の方はまた見なくなりました).
 このドラマの主人公(の一人)は,故郷,スコットランドを離れて「マッサン」とともに日本にやって来たエリーです.

なつかしい人々 なつかしい風景
その総てと離れても あなたと歩きたい
(中島みゆき,「麦の唄」)

彼女は,過去の故郷にこだわらず,明日に向かって歩んで行きます.「未来の故郷」から聞こえて来る歌声に導かれながら・・・.

麦は泣き 麦は咲き 明日《あした》へ育ってゆく
・・・
泥に伏せるときも 歌は聞こえ続ける
「そこを超えておいで」
「くじけないでおいで」
どんなときも届いて来る 未来の故郷から
(同)

 才市さんに

わが迷い ふるさとは なむあみだぶつ
(楠三-02-059, p.63)

という短い口あいがあります.私は,お浄土からこの世に生れて来たわけではありません.だから,お浄土は,私が生まれ育った故郷ではない.しかし,阿弥陀様の働きによって,やがては,お浄土に必ず生まれさせていただく.そういう意味では,お浄土は私が帰って行くべき場所,私のふるさとと言えます.だから,「ふるさと」は南無阿弥陀の世界,つまりお浄土である,という口あいです.
 そのお浄土から,阿弥陀様はどんなときも,必ず来いと呼びかけてくださっています.それがお念仏として私に届いて来る.その呼び声にお念仏で答えながら,泥の中にあっても,美しいお念仏の華とともに生きて行く・・・.才市さんにとっては,お念仏の世界,お浄土こそが「未来の故郷」だったのでした.

【補足】
 才市,『ご恩うれしや』:石見の才市顕彰会編『ご恩うれしや』.
 楠三-02-059, p.63:楠恭編『妙好人才市の歌 全』の三の第2ノート, 59番.この口あいは以前にもご紹介しました.第1句(「わがまよい」)と2句目以降の関係についてはそちらをご覧ください.
 なお,才市さんの口あいは,例のごとく,字句を直してあります.

 中島みゆき「麦の唄」:いうまでもなく,『マッサン』の主題歌です.NHKの歌番組で歌われたときの字幕から.

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