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[才市] 鐘の音 聞く耳もろうた
旧ブログ 2015年5月13日 (水)

わたしや しやわせ
鐘の音 聞く耳もろうた
なむあみだぶの ごさいそく
なむあみだぶを 聞けよのことよ
(鈴木, 04:071)

 少し前に有福の善太郎さんの逸話をご紹介しましたが,善太郎さんには,こんな逸話もあります.

 善太郎さんは年中,仕事に追われていて,光現寺に法座がある日でも,クワの手を休めるわけにはゆかなかった.その日も参道ちかくで畑仕事をしていた.午後,法座を知らせる喚鐘がなった.
「チャン」.
善太郎さんは即座に寺の方に向き直って
「ハイ」と返事をする.
「チャン・チャン」.
「ハイ,ハイ.参ります,参ります」.
「チャン・チャン・チャン・チャン・・・」.
もうじっとしておれない.
「ヤレ,どうがしょう[どうしよう].参りますとも,参りますとも」.
そういって,泥足のまま,クワをかついで,寺の方に駈け出した.
(菅, pp.23--24. 大意)

 才市さんも善太郎さんも,お寺の鐘の音を,この私が喚ばれていると聞いたのでした.

【補足】
鈴木, 04:071:  鈴木大拙編著『妙好人浅原才市集』, ノート4の71番(p.55).用字,改行などを読みやすく改めました.

 菅: 菅 真義『妙好人 有福の善太郎』(光現寺内栄安講 発行,百華苑 発売, 増補5版, 1994). pp.23 -- 24 から抜粋・要約しました.なお,ハーベスト出版 編集『親子で読んでほしい 妙好人 有福の善太郎』(松江市:ハーベスト出版, 2011)では pp.10--11.に同じ話が紹介されています.

 余談ですが,私のタブレットは,「喚鐘」と変換してくれません.「半鐘」もダメ.「喚鐘」,「半鐘」なんて,時代小説や落語などでも活躍している言葉なのに.その一方で,「管掌」なんぞという候補があります(そんな言葉があるんですねぇ).辞書作成者の顔がどちらを向いてるか,ほのみえるような・・・.

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