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道綽禅師のこと コーダ:正法の時機とおもへども
旧ブログ 2010年5月11日 (火)

正法の時機とおもへども
底下の凡愚となれる身は
清浄真実のこころなし
発菩提心いかがせん
(『正像末和讃』の15)

 “わたし,平安時代に生まれたかったな~~.十二単,ステキ~~.”
 “何言ってるんだか.粗末な麻の服着て,朝から晩まで働きづめだった人がほとんどだったのに.平安時代に生まれていれば,確率的にいって間違いなくこっちだね.”

 中学か高校のころ聞いた会話です.横で聞いていただけですが,けっこう衝撃的でした.それ以来,戦国時代に生まれていれば・・・などとと聞くと,ま,足軽として戦に引っ張り出された挙句,どこかの田んぼに瀕死の状態で見捨てられ,自分の田のことを心配しながら死んでいくってとこですか,などと思ってしまいます(衝撃のあまり,性格が曲がっちゃったかな^-^;).

 道綽禅師が浄土門をお建てになったのは,それが末法の世の人々に一番適したみ教えだからでした.では,お釈迦様の時代に生まれていれば,私は正しい修行をして自力で覚りを得ていたでしょうか.
 お釈迦様は極端な苦行や荒行を間違った方法として退けられ,正しい修行の方法を示されました.ですから,修行している格好をつけるだけなら簡単になったといえるでしょう.しかし,修行によって煩悩を断ち,最高の智慧を得ることが簡単になったわけではありません.お弟子の中にも,なかなか覚りに達することができなかった方もいらしたようです.いや,そのまえに,日々の生活に追われ出家さえできなかった膨大な数の人々がお釈迦様の時代にもいました.

聖道門のさまざまな教えは,釈尊の在世時代と正法《しょうぼう》の時代のためのものであって,像法《ぞうぼう》や末法《まっぽう》や法滅《ほうめつ》の時代とその人々のためのものではない.すでにそれは時代にあわず,人々の資質に背くものである.浄土の真実の教えは,釈尊在世の時代にも,正法や像法や末法や法滅の時代にも変わりなく,煩悩に汚れた人々を同じように慈悲をもって導いてくださるのである.
(『教行信証』)

 このお言葉は,‘在世・正法ではない像法・末法・法滅の時代には浄土真宗が’となりそうなところが,‘在世・正法も含めて’となっています.
 この私は,何の時代に生まれても自力修行は叶わない,在世・正法の時代でもやはりお浄土の真の教えによるしかなかっただろう,いつの時代でも私にとっては末法の時代である,そして,末法の世に生まれたからこそ,そういう自分の本当の姿を知らされ,真のみ教えにであうことができた・・・.
 『正像末和讃』を順に読んでいくと,道綽禅師の末法について親鸞聖人はそうご教示くださっているように感じられます.

【補足】 道綽禅師シリーズ(?)は,これで一応おしまいです.三夜連続のつもりが,五夜連続になってしまいました.長くて読みにくいものをお読みいただき,ありがとうございました.なお,週半ばの更新は今週はお休みさせていただいて,次回は土曜か日曜の予定です.以前の形に戻りますので,引き続きよろしくお願いいたします.

では,例によって出典を:
 『正像末和讃』の15:『浄土真宗聖典 注釈版』, p.603)
 『教行信証』:『顕浄土真実教行証文類(現代語訳)』,本願寺,pp.529--530.『浄土真宗聖典 注釈版』では,p.413(『仮身土巻』【69】).

聖道の諸教は在世・正法のためにして、まつたく像末・法滅の時機にあらず。すでに時を失し機に乖けるなり。浄土真宗は在世・正法・像末・法滅、濁悪の群萌、斉しく悲引したまふをや。

コメント

連載こくろうさまでした。
知恵浅き身にはかなり難しかったですが、和讃が登場してくると、難しい中でも毎日拝読してすこし馴染んでいるせいか、読みやすい感じがします。
今は末法の時代でしょうか?それとも法滅?
どの時代に生まれようとも等しく救われるのが有り難いですね。
弥勒菩薩の誕生が心待ちされますが、56億7千万年は待ちきれません、違うところに行って待つことにいたします。
才市さんの法要が近ついて来ましたね。何とかお参りできるように計画中です。決行できましたら、宜しくお願いいたします。

 こんばんは.コメント公開が遅くなり失礼いたしました.また,最後までお読みくださりありがとうございました.
 日頃から聞き馴染んでいて,それに出会うとすっと心にはいる,そんなご和讃とかお経の一節があるというのは,ありがたいことですね.お聴聞などでも,そんな一節が出てくると,うんうんって頷いたりして,それを手がかりに聞いていけることがあります.
 末法は起点や長さに諸説あるみたいで,いつから滅法に入るのか私もよく知りません.どうも,形の上では,まだ末法みたいですが・・・.と,呑気なことを言ってても大丈夫なのがありがたいところです.
 「違うところ」では,ぜひご一緒に・・・(^^).あ,その前に,6月6日にお会いできればいいですね.

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