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「泣いてもどうにもならないって言うけれど・・・」
旧ブログ 2010年2月21日 (日)

泣いてもどうにもならないって言うけれど,
どうにかしたくて,泣くんじゃない・・・

 だいぶ前のことですが,どこかのお店で流れていたBGMの一節です.女性の声でしたが,私の知らない歌手の知らない曲でした.あ,と思ったときにはもう,流れ去っていたので,本当にこういう歌詞だったかどうか・・・? でも,心に残る歌詞でした.ひょっとしてよく知られた歌でしょうか.

 泣いても仕方ないことを泣くのは愚かです.“必ずそうなる”という事態に直面して泣くのも愚かです.お釈迦様が亡くなられたとき,修行の浅い弟子たちが泣いてしまい,他のお弟子から注意されたという話もあります.

 でも,泣いてしまう.そういう愚かで心の弱い私を,そのまま包み込んでくださるのが阿弥陀如来であると聞かせていただいています.

父母・妻子が死んで嘆き悲しむ人に,「甲斐なく嘆いてはいけない」と言うべきではない.愚かに嘆き悲しむ人こそ,阿弥陀様が救おうと誓われた人である.
(『口伝承』大意)

【補足】
 釈尊が亡くなられたときの話は中村 元 訳『ブッダ最後の旅』, 岩波文庫, pp.161--pp.162.なお,泣いたのは阿難尊者だったと読める記述があります.本書の注でも触れられていますが,これについてはまた.

 覚如上人 『口伝鈔』(17)(『注釈版聖典』pp.904--905)

一 凡夫として毎事勇猛のふるまひ、みな虚仮たる事。
 愛別離苦にあうて、父母・妻子の別離をかなしむとき、「仏法をたもち念仏する機、いふ甲斐なくなげきかなしむこと、しかるべからず」とて、かれをはぢしめいさむること、多分先達めきたるともがら、みなかくのごとし。この条、聖道の諸宗を行学する機のおもひならはしにて、浄土真宗の機教をしらざるものなり。
 まづ凡夫は、ことにおいてつたなく愚かなり。その奸詐なる性の実なるをうづみて賢善なるよしをもてなすは、みな不実虚仮なり。[中略]愚かにつたなげにしてなげきかなしまんこと、他力往生の機に相応たるべし。[後略]

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