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「マホメットを崇拝していた者にとって,マホメットは死んだ・・・」
旧ブログ 2010年1月23日 (土)

マホメットを崇拝していたものにとって,マホメットはたしかに死んだ.神を崇拝していたものにとって,神は生きている.神は死にたもうことはない.(イブン・イスハーク「マホメット伝」)

 マホメットが死んで動揺する信者に,後継者となるアブー・バルクが語る言葉です.イスラム版「法に依り人に依らず」というところでしょうか?

 ところで,最近では,イスラム教徒といえばテロリストを連想してしまいますが,イスラム教=聖戦=テロと理解されることは,イスラム教の多くの方々にとっては迷惑なことなのだろうと想像しています.

 高校のときに使った世界史の参考書に,こんなコラムがありました.

‘片手にコーラン,片手に剣’といわれ,イスラム教を信仰しないものは殺されたとされるが,実はもう一本の手があった.税金を余分に納めれば,他の宗教を信仰することも許されていたのである.
(記憶による要約)

 「聖戦」なんて言葉を聞きかじっていたので,ちょっとした驚きでした.‘イスラム教の特徴は他の宗教に寛容なことだ’という意味の言葉にちょいちょいお目にかかるような気がするのも,そのときの驚きによってそういう言葉に注意を引かれようになったためでしょう.

 テロを正当化するイスラム教と寛容な宗教の代表としてのイスラム教.人が宗教に基づいて行動するとき,一つの宗教もさまざまな顔を見せるものですね.

【補足】 イブン・イスハーク(704年頃--767年頃)「マホメット伝」からの引用は,『筑摩世界文学大系 9: インド アラビア ペルシア集』, p.249(嶋田 襄平 訳)による.

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